〈不凍蛋白質 (Antifreeze Protein; AFP)〉 * 図と文章:津田、本ホームページに掲載している図版の無断転載・コピーを固くお断りします。

不凍蛋白質は、凍結温度域において細胞内に生成する氷結晶の表面に特異的に結合してその成長を食い止め、組織の凍結から身を守る生体防御物質です。この蛋白質は、食肉の冷凍保存法開発や冷熱輸送技術、臓器移植技術などに幅広く応用が可能と考えられています。

<2量体型タイプIII不凍蛋白質の研究紹介 ( J. Biol. Chem., 276 (2), 1304-1310 (2001). >
1.下の図は、当研究室が初めて明らかにした南極ゲンゲ(Atlantic eel pout, Rhigophila dearborni)という魚類が有する高機能2量体型不凍蛋白質(RD3)の3次元分子構造です。RD3は、現在知られている中で唯一の分子内2量体型の不凍蛋白質です。当研究室では、遺伝子情報を基にしてこの蛋白質の 13C/15N同位体ラベル蛋白質を発現し異種核多次元NMR実験による水溶液構造の決定に成功しました。また、RD3は低濃度域において単量体型よりも6倍も強い凝固点降下能を有すること、RD3が結合した氷結晶の大きさは他に比べて小さいことも明らかにしました。

2.下の図は、RD3の氷結晶結合面を示すステレオ表示図です。NドメインとCドメインの各々の表面には、氷結晶のプリズム面の酸素原子の位置にマッチするように複数の極性アミノ酸残基が配置していることが明らかになりました。これらの残基は平面内にあり、プレッツェル構造というらせん状構造に支えられて出来ています。これら2つの氷結晶結合平面は約32度の角度でかたむいており、Cドメインの面はNドメインの面に比べて約3.5オングストローム前方にあることも分かりました。
3.40個のNMR算出構造をCドメインについて良く重なるように描いたステレオ表示図を下に示します。この図から、Cドメインの氷結晶結合残基(CPK表示)が氷結晶表面と結合することに伴い、Nドメインの氷結晶結合面(白線)が赤色の位置(氷表面から最も離れた所)から青色の位置(Cドメインの氷結晶結合表面と同じ所)に移動し、最終的に両ドメインの氷結晶結合残基がともに氷と結合するものと想像されました。上記2で示す構造は黄色で示す主鎖骨格(平均構造)に相当します。